はじめに:在庫は「多すぎても少なすぎても」お金を食いつぶす
EC運営で避けて通れない悩みが「在庫」です。
売れ筋商品が欠品すると、せっかくのチャンスを逃してしまう一方で、売れない商品を大量に抱えていると、倉庫代やキャッシュを圧迫します。
Shopifyには、こうした在庫の偏りを見える化するための「在庫レポート」と、
売れ筋・死に筋をA/B/Cに分類する「ABC分析」が標準機能として用意されています。
本記事では、
- Shopifyの在庫レポートで見られる内容
- ABC分析の基本と、Shopifyでの使い方
- 売れ筋・死に筋商品を特定する具体的なステップ
- CSVエクスポート+スプレッドシートでの応用
- ABC分析のよくある失敗と注意点
を、中小企業やD2Cブランドの担当者向けに、実務レベルで解説します。
Shopifyの「在庫レポート」とは?
在庫レポートで何が分かるのか
Shopify管理画面の「Analytics(分析)」→「Reports(レポート)」には、
「Inventory(在庫)」カテゴリのレポートが用意されています。
プランによって内容は多少異なりますが、代表的なものは次の通りです。
- 在庫サマリー(Inventory summary):SKUごとの在庫数、在庫ステータス
- 在庫販売率・在庫日数(Percent of inventory sold / Days of inventory):在庫の減り方・滞留度合い
- 月末在庫価値(Month-end inventory value):特定日時点の在庫金額(原価ベース)
- ロケーション別(倉庫別)の在庫レポート
- 商品別・バリアント別の在庫動き
これらを組み合わせることで、
- どの商品が在庫を大きく抱えているのか
- どのSKUがよく売れて、どのSKUがまったく動いていないのか
- 在庫金額ベースでどれくらい資金がロックされているのか
といった情報を把握できるようになります。
ABC分析レポートとは
Shopifyのヘルプでは、在庫レポートのひとつとして「ABC analysis report(ABC分析レポート)」が紹介されています。
これは商品を売上(または利益)への貢献度に応じてA/B/Cの3クラスに分類し、
「どの商品を優先的に仕入れ・在庫管理すべきか」を判断するためのレポートです。
一般的な考え方では、
- Aクラス:全商品のうち少数(例:20%)だが、売上の大半(例:70〜80%)を占める主力商品
- Bクラス:売上構成の中盤に位置する準主力・準売れ筋
- Cクラス:品目数は多いが、売上への貢献は小さいロングテール商品
というように分類されます。
この考え方は、在庫管理の世界で古くから使われている「ABC分類」「パレートの法則」に基づいています。
ABC分析の基本:なぜ在庫管理で重要なのか
「全部同じように管理する」は非効率
全てのSKUを同じ精度・頻度で管理しようとすると、工数もコストもかかりすぎます。
ABC分析の目的は、
- A商品:欠品させない/在庫切れは機会損失
- B商品:売れ行きを見ながらメリハリを付ける
- C商品:在庫を絞り、売場スペースとキャッシュを圧迫させない
といった優先順位を明確にし、在庫管理のリソースを最適配分することです。
特にECでは、新商品やバリエーション(色・サイズ)を増やすほどSKU数が膨れ上がりがちなので、
ABC分析をベースに「どこまでSKUを増やすか」「どこを削るか」を定期的に見直していく必要があります。
ABCの分類基準:売上・利益・回転率など
ABC分析の軸としてよく使われる指標は次の通りです。
- 売上金額(過去◯ヶ月の累計売上)
- 粗利額(売上 − 原価)
- 販売数量
- 在庫金額(在庫数 × 仕入原価)
- 在庫回転率・在庫日数(DII)
Shopifyの標準ABCレポートでは、売上(revenue)を基準にA/B/Cを付けることが多いですが、
スプレッドシートなどと組み合わせれば粗利額ベース・在庫金額ベースのABC分析も行えます。
Shopifyの「在庫レポート」でABC分析レポートを開く手順
Step1:Analytics → Reports → Inventory を開く
まずはShopify管理画面から在庫レポート一覧を開きます。
- Shopify管理画面にログイン
- 左メニューから「Analytics(分析)」→「Reports(レポート)」をクリック
- レポート一覧上部の「Category(カテゴリ)」フィルタから「Inventory(在庫)」を選択
これで、在庫に関するレポートだけが一覧表示されます。
Step2:「ABC analysis」レポートを探す
在庫レポート一覧の中に、「ABC analysis report」または「ABC inventory analysis」に類するレポートがあれば、それをクリックします。
(テーマやプラン、管理画面UIの更新により名称が多少変わる場合があります)
このレポートでは、商品ごとに
- 商品名・バリアント
- 売上(または売上貢献度)
- 全体売上に対する累積構成比
- A/B/Cのグレード
といった情報が一覧表示され、A・B・Cごとに並び替えやフィルタが可能です。
Step3:日付レンジ(対象期間)を設定する
ABC分析は、どの期間の売上を元に分類するかによって結果が大きく変わります。
- シーズン性の低い通年商品 → 過去6〜12ヶ月
- 季節商品・トレンド商品 → 直近3〜6ヶ月
- セールの検証 → セール期間中のみ など
を目安に、ビジネスの実態に合った期間を選びましょう。
特に強いシーズン性がある商材は、短すぎる期間で分析すると偏りやすいので注意が必要です。
ABC分析レポートの読み方とクラス別戦略
Aクラス:売上の大半を占める「絶対に欠品させたくない商品」
Aクラスは、全SKUのうち少数ですが、売上の70〜80%以上を占めることが多いゾーンです。
EC事業の売上・利益を支える「柱商品」と言って良いでしょう。
Aクラス商品に対しては、
- 欠品による機会損失を防ぐため、在庫水準をやや厚めに確保する
- 在庫日数(DII)を計算し、「何日分の在庫を持つか」の基準を決める
- 広告・LP・SNSなどの露出を集中投下し、さらに売上を伸ばす
- 同カテゴリーの新商品の基準(価格帯・スペック)として参考にする
といった方針が基本になります。
Bクラス:伸ばすか、守るかを見極める「準主力商品」
Bクラスは、売上構成の中間ゾーンです。
「売れてはいるが、Aクラスほどのインパクトはない商品」「今後の伸びしろがありそうな商品」が含まれます。
- Aクラスになれるポテンシャルがある商品:
→ LP改善・セット販売・レビュー強化・広告テストなどで「育てる」対象。 - 長年Bクラスに留まっている商品:
→ 少量在庫で回しつつ、売場スペースやSKU数を増やしすぎないように注意。
Bクラスの扱い方次第で、「Aクラスを増やせるか」「Cクラスを減らせるか」が変わってきます。
Cクラス:在庫の圧迫要因になりやすい「死に筋候補」
Cクラスは、SKU数は多いものの、売上への貢献はごく一部…という商品群です。
在庫管理の観点では、もっとも慎重に扱うべきゾーンとも言えます。
Cクラスの中でも、
- 在庫数が少なく、売上も少ない → ロングテールとして少量だけ置いておく
- 在庫数が多いのに、売上が少ない → 強い「死に筋候補」。在庫圧縮の最有力。
- 新商品でまだ実績がない → 一時的にCクラスになることはあるので、期間を区切って様子を見る
など、状況はさまざまです。
特に「在庫金額」が大きいC商品は、資金をロックしてしまう原因になるため、
セール・セット販売・仕入れ停止などの判断を優先的に検討しましょう。
具体的な「売れ筋・死に筋特定ステップ」
Step1:ABC分析レポートをA/B/Cごとにソートする
ABC分析レポートを開いたら、まずはクラス(Grade)で並び替えましょう。
- Aクラスだけをフィルタ → 「売上の柱」商品リスト
- Cクラスだけをフィルタ → 「見直し候補」商品リスト
この段階で、感覚では分からなかった「売上の偏り」「死に筋候補」が目に見える形になります。
Step2:在庫レポートと掛け合わせて「危険度」を評価する
ABCクラスだけでは、売上構成しか分かりません。
そこで、他の在庫レポートと組み合わせて、次のような視点で評価します。
- Aクラス × 在庫少 → 欠品リスク大。追加発注・在庫水準の見直し。
- Aクラス × 在庫多 → 需要が安定していれば妥当だが、過剰でないか確認。
- Cクラス × 在庫多 → もっとも危険。早急に販促・セール・仕入れ停止を検討。
- Bクラス × 在庫適正 → 通常通りの補充でOK。ただしAクラスに育てられる商品は優遇。
このように、「売上の貢献度(ABC)」と「在庫水準・在庫金額」を掛け合わせてリスクリストを作ると、次のアクションが決めやすくなります。
Step3:Cクラスの「死に筋リスト」を作成する
Cクラスの中でも、
- 在庫数が多い
- 在庫価値(在庫数 × 原価)が大きい
- 一定期間まったく売れていない
といった商品は、強い「死に筋候補」です。
これらを別シートに抜き出して「死に筋リスト」として管理し、
- 値下げセール・在庫処分キャンペーン
- 人気商品とのセット販売(ついで買いを狙う)
- 在庫限りで終売・仕入れ停止
などの方針を決めていきます。
Step4:Aクラスの「重点管理リスト」を作る
一方でAクラスについては、次のような観点で「重点管理リスト」を作りましょう。
- 現状の在庫日数(DII)の目安
- リードタイム(発注から入荷までの日数)
- 売れ行きの季節性(ピークがいつか)
これらを整理すると、
- 最低何日分の在庫を常に確保すべきか
- いつまでに何個発注すべきか
といった具体的な安全在庫・発注ルールを設定しやすくなります。
Shopifyレポート+スプレッドシートで自前のABC分析を作る
標準のABCレポートがない場合・カスタムしたい場合
プランや時期によっては、Shopify標準のABC分析レポートが利用できないケースや、
「売上ではなく粗利/在庫価値ベースでABC分析したい」といったニーズもあります。
その場合は、在庫レポートをCSVエクスポート→スプレッドシートでABC分析する方法がおすすめです。
Step1:対象となる在庫レポートをエクスポート
例えば、
- 「在庫サマリー」や「月末在庫価値」レポート
- 「商品別売上」レポート(Analytics → Sales)
をCSVでエクスポートします。
在庫レポート側で在庫数・在庫価値を、売上レポート側で売上金額や販売数量を取得し、
後でSKU(バリアント)をキーにJOINするイメージです。
Step2:年間売上(または粗利)の高い順に並べる
スプレッドシート上で、SKUごとの年間売上(または粗利)を集計し、
高い順でソートします。
そのうえで、
- 累積売上構成比(累計売上 ÷ 全体売上)
を計算し、
- 累積構成比 〜70〜80% → Aクラス
- 〜90〜95% → Bクラス
- それ以外 → Cクラス
といったルールでA/B/Cを付与します。
Step3:在庫数・在庫価値を掛け合わせて「危険度マップ」を作る
最後に、在庫レポートから取り込んだ
- 在庫数
- 在庫価値
と、ABCクラスを組み合わせてピボットテーブルや色付きの表を作ると、
ひと目で「売れていないのに在庫だけ多いC商品」が浮かび上がります。
ここまでできれば、Shopify標準機能に頼らなくても、
自社専用の「在庫リスクダッシュボード」として運用することが可能です。
ABC分析のよくある失敗と注意点
注意点1:一度やって終わりにしてしまう
ABC分析は、一度やって終わりにしてしまうと、すぐに陳腐化します。
シーズンやトレンド、広告施策の影響で、売れ筋商品はどんどん変わるからです。
最低でも、
- 季節商材があるストア → 3ヶ月に1回
- 通年商材が中心のストア → 半年〜1年に1回
のペースで、ABC分析を定期更新するサイクルを作りましょう。
注意点2:季節商品・新商品の扱い
ABC分析は過去データに基づくため、
- 販売開始直後の新商品
- 年に数ヶ月しか動かない季節商品
などは、正しく評価されないことがあります。
こうした商品は、
- 全体のABC分析からは除外して、別枠で管理する
- シーズンごとに期間を切ってABC分析を行う
といった工夫が必要です。
注意点3:売上だけに頼りすぎる
売上ベースのABC分析だけを頼りにすると、
- 粗利率が低いのにAクラス扱いされる商品
- 利益貢献は大きいのに、売上だけ見ると過小評価される商品
が出てくることがあります。
可能であれば、
- 売上ベースのABC分析
- 粗利ベースのABC分析
の2軸で分析し、
「売上A × 粗利A」の真の主力商品を見つけるのがおすすめです。
注意点4:店舗(POS)や他チャネルを含めた全体最適を忘れる
Shopify POSや外部モールと連動しているストアの場合、
オンラインストアだけでなく、実店舗・他チャネルを含めた全体でABC分析することが重要です。
例えば、
- オンラインではCクラスだが、店舗ではAクラス
- 特定モールでだけよく売れているSKU
といったケースもあり得ます。
在庫管理はチャネル横断で考え、必要に応じてデータを統合して分析しましょう。
まとめ:在庫レポート+ABC分析で「売れる在庫だけを持つ」体制へ
本記事では、Shopifyの「在庫レポート」とABC分析を活用して、
売れ筋・死に筋商品を特定する方法を解説しました。
- 在庫レポートで在庫数・在庫価値・在庫日数を把握する
- ABC分析で売上(または利益)への貢献度をA/B/Cに分類する
- Aクラスは欠品防止と強化、Cクラスは在庫圧縮・処分を優先する
- 必要に応じてCSVエクスポート+スプレッドシートで自前のABC分析を行う
- 季節性・新商品・粗利なども加味して、定期的に分類を更新する
在庫は、ただ「減らせばいい」「増やせばいい」ものではなく、
「売れる在庫にはしっかり投資し、売れない在庫は早めに手放す」というメリハリが重要です。
Shopifyの在庫レポートとABC分析をうまく使いこなせば、
感覚ではなく数字に基づいた在庫戦略が立てられます。
まずは自社ストアの「Inventory(在庫)」レポートを開き、
A/B/Cそれぞれの商品リストを作るところから始めてみてください。






















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