はじめに:なぜMr. CHEESECAKEは「EC制作・D2Cの教科書的ブランド」と言われるのか
「世界一じゃなく、あなたの人生最高に。」――。
そんな印象的なコピーとともに、毎週の販売開始と同時に完売が続く「幻のチーズケーキ」として知られているのが、D2Cブランド「Mr. CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)」です。
ミシュラン掲載レストランで修行したフレンチシェフ・田村浩二さんが2018年に立ち上げ、
オンラインショップ中心・数量限定販売というスタイルで一気に話題となりました。
ECモールに全面的に依存せず、自社EC(Shopify)+SNS+メディア発信を組み合わせたD2Cモデルで急成長。
単なる「ネット通販サイト」という枠を超え、ブランドストーリーと販売体験を一体化したECとして、多くのEC制作者・マーケターのベンチマークになっています。
本記事では、【EC制作事例:D2C】Mr. CHEESECAKE:オンライン限定販売でブランド価値を高めたストーリーテリングをテーマに、
- ブランド立ち上げとオンライン限定販売の背景
- Shopifyを活用したECサイトのデザインと情報設計
- 「幻のチーズケーキ」を生んだ販売方法とコミュニケーション設計
- D2Cブランドが真似できるストーリーテリングのポイント
を、EC制作・D2C立ち上げの視点から解説します。
1. ブランドの成り立ち:SNSの1枚の投稿から始まったD2C
1-1. 趣味のチーズケーキが「人生最高のチーズケーキ」へ
Mr. CHEESECAKEの始まりは、シェフが趣味で作っていたチーズケーキをSNSに投稿したことでした。
「食べてみたい」という反応が相次ぎ、知人向けの販売から徐々に広がっていきます。
シェフとして培った経験を活かし、ベイクドとレアの“良いとこ取り”をした食感と香りの設計、
温度によって味わいが変化するレシピなど、徹底的に作り込んだのがMr. CHEESECAKEの特徴です。
1-2. 2018年のブランド立ち上げとオンラインショップ
ブランドは2018年にスタートし、販売チャネルはオンラインのみ。
当初から「店舗を増やす」のではなく、自分たちのペースで最高品質を届けるためのD2Cモデルが選択されました。
現在も、公式オンラインショップでの販売を中心としつつ、
期間限定のポップアップストアやコラボ企画によりブランド体験の場を広げています。
1-3. BASEからShopifyへ――EC基盤のリニューアル
立ち上げ当初は国内サービス「BASE」でECを運営していましたが、
ブランドの成長に伴い、Shopifyを採用した本格的なECリニューアルを実施。
Shopify採用の理由としては、
- デザイン・テーマの柔軟性(使用テーマは「Cascade」などの事例あり)
- 決済・在庫・アプリ連携を含めた拡張性
- 海外展開や将来のスケールも見据えたプラットフォーム選択
といった点が挙げられ、
「ブランド体験を損なわずにスケールさせるためのEC基盤」としてShopifyが選ばれたことがわかります。
2. ECサイトのデザイン:余白と写真で世界観を語る
2-1. ミニマルなレイアウトで「チーズケーキそのもの」を主役に
Mr. CHEESECAKEのECサイトを開くと、まず目に入るのは余白の多いミニマルなデザインと、
シンプルなチーズケーキと原材料の写真です。
ポイントは、
- 派手なバナーやポップアップを極力排除
- 写真のトーン・光・色味を統一し、世界観を守る
- 文字情報は必要最低限、しかし要点はしっかり伝える
という「静かなEC」であること。
これにより、ユーザーの視線は自然とチーズケーキの質感・色・温度感に集中します。
2-2. 原材料が一目で分かるビジュアルとコピー
ブランドのこだわりである「素材の良さ」を伝えるために、
原材料を並べた写真や、断面がよく見えるカットなど、視覚的に“おいしさ”を伝える写真が多用されています。
また、テキストコピーでは、
- 「世界一じゃなく、あなたの人生最高に。」
- 「濃厚なのに、すっと溶ける。」
といった体験を想像させる言葉が使われ、
スペックではなく「どんな時間を過ごせるか」を想像させる構成になっています。
2-3. Shopifyテーマ「Cascade」によるストーリー性のある構成
ECサイトでは、写真を大小さまざまなブロックで配置できるShopifyテーマ「Cascade」が採用されている事例が紹介されています。
縦一列に「商品→説明→カート」という構成ではなく、
- 商品のアップ
- 原材料の写真
- 食べ方や温度による味の変化を示すビジュアル
- ブランドストーリーやシェフの想い
を1つの長いストーリーとして見せていくレイアウトが組まれており、
「読むほどに買いたくなる」情報設計になっています。
3. オンライン限定・数量限定販売が生む「幻」のストーリー
3-1. 日曜・月曜10時、オンライン限定・数量限定という設計
Mr. CHEESECAKEの販売形式で有名なのが、
「毎週日曜と月曜の朝10時から、オンライン限定・数量限定で販売」というルールです。
大量生産・常時購入できる体制をあえて取らず、
- シェフが品質をコントロールできる生産量に絞る
- 毎週「発売日」というイベントをつくる
- 販売開始後すぐ完売することで希少性を強調
というブランド戦略としての販売設計がなされています。
3-2. 「幻のチーズケーキ」というニックネームとUGC
この販売方法により、SNSやメディアでは
「幻のチーズケーキ」「入手困難なチーズケーキ」といった言葉で取り上げられます。
ユーザーが、
- 「今週も買えなかった」「ようやく買えた」
- 「冷凍のまま・半解凍・全解凍それぞれ試してみた」
といった体験を自発的に投稿し、UGC(ユーザー生成コンテンツ)として拡散。
オンライン限定・数量限定という“制約”が、結果的にストーリー性と話題性を生んでいます。
3-3. ECモールに頼らず、あえて「自社ECのみ」で始めた意味
D2Cブランドの成功事例として紹介される際、
Mr. CHEESECAKEは、「モールに出店せず、自社サイトでブランド価値を育てた」点が評価されています。
モールの集客力は魅力ですが、
- 価格比較されやすい
- ページデザインの制約が大きい
- ブランドの物語を語りにくい
といった弱点もあります。
Mr. CHEESECAKEは、「世界観を守るには、自社ECでのストーリー設計が必須である」と捉え、
あえてオンライン限定・自社サイト販売を選択。
これにより、コンテンツ・販売方法・顧客とのコミュニケーションを一気通貫でデザインできる余地を確保しています。
4. ストーリーテリングの設計:ECサイト全体で「時間」を売る
4-1. 「人生最高のチーズケーキ」が提供しているのは「時間」
Mr. CHEESECAKE代表の田村さんは、インタビューの中で、
ブランドが提供しているのは「商品そのものだけでなく、一緒に過ごす時間」だと語っています。
ECサイトの文章やコンテンツでも、
- 特別な日のご褒美に
- 大切な人と過ごす静かな朝に
- 自分をねぎらう夜の時間に
といったシーンを想像させる表現が散りばめられています。
この「時間のストーリー」は、
単なる商品説明ではなく、ブランドが一貫して伝えたい価値として、ECサイト全体に通底しています。
4-2. ジャーナル・コラム・開発秘話で「裏側」を見せる
公式サイト内のジャーナルでは、
エンジニアやスタッフのインタビュー、開発の舞台裏、
ブランドが大切にしている価値観などが丁寧に発信されています。
たとえば、
- なぜShopifyを選んだのか
- どのようにして今の販売形式にたどり着いたのか
- チームメンバーがどんな思いで仕事をしているのか
といった「ブランドの裏側」まで公開することで、
ユーザーは商品だけでなくブランドそのもののファンになっていきます。
4-3. 音声接客やスタンプなど、チャネル横断の体験設計
2021年には、音声配信プラットフォーム「stand.fm」を使った音声接客も開始。
オンラインショップ限定ブランドでありながら、
レストランでの料理説明のように、言葉でストーリーを届ける接客体験を実現しています。
また、Instagramストーリーズ用のオリジナルスタンプの配布など、
SNS上でも「ブランドと一緒に遊べる」仕掛けを用意。
これらはすべて、ECサイト外の接点からも物語を続けるための施策と言えます。
5. EC制作・D2Cブランドが真似できるポイント
5-1. 「オンライン限定・販売条件」もストーリーの一部として設計する
Mr. CHEESECAKEの成功は、
「たまたま入手困難になった」のではなく、
販売条件そのものをストーリーとして設計した結果です。
あなたのブランドでも、
- 販売日・時間を限定する
- 数量をあえて絞る
- 季節・記念日に合わせた限定フレーバーを用意する
といった設計をすることで、
「いつでも買える」から「ついチェックしてしまう」存在へと変えていくことができます。
5-2. ECサイト全体で「時間」と「体験」を描く
商品ページだけでなく、トップページ・ジャーナル・ブランドページを通じて、
「どんな時間を過ごしてほしいか」を描くことが、D2Cブランドには不可欠です。
具体的には、
- ファーストビューで「ブランドの世界観」と「提供する体験」をコピーと写真で伝える
- 商品ページで「どんなシーンで食べると幸せか」まで言語化する
- ブログやジャーナルで、開発秘話やスタッフの想いを綴る
といったコンテンツを設計し、
「スペック説明」から「体験の物語」へと重心を移していきましょう。
5-3. Shopify活用:ブランドを損なわないEC基盤を選ぶ
Mr. CHEESECAKEがBASEからShopifyに乗り換えたように、
ブランドの成長に合わせてEC基盤を見直すことも重要です。
Shopifyを使うことで、
- ミニマルなビジュアルを表現できるテーマ選択
- メール・SMS・CRMツール(Klaviyoなど)との連携による継続コミュニケーション
- 決済・配送・ポップアップストア予約などの機能拡張
を、コードレス〜ローコードの範囲で実現できます。
EC制作の現場では、
「とりあえず売れる仕組み」ではなく、
ブランド体験とスケールを両立できる基盤選びが、長期的には大きな差になります。
6. 自社ECに落とし込むためのチェックリスト
6-1. ブランドストーリー編
- □ ブランドの「原点のエピソード」をきちんと書いているか(なぜ始めたのか)
- □ 商品ではなく、「どんな時間・体験」を提供したいかが言語化されているか
- □ そのストーリーが、トップページ・商品ページ・ジャーナルで一貫しているか
6-2. 販売設計編
- □ 販売日・数量・フレーバーに「理由」や「物語」があるか
- □ あえて制約を設けることで、ブランド価値や話題性が高まるポイントはないか
- □ モール任せではなく、自社ECでストーリーを語る設計になっているか
6-3. EC制作・UX編
- □ 写真のトーンや余白など、ビジュアルの一貫性が保たれているか
- □ 商品詳細ページで「スペック」と「体験」の両方がバランスよく伝わっているか
- □ 決済・配送・問い合わせまで、ストレスのない導線が設計されているか
まとめ:オンライン限定販売は「制約」ではなく、最強のストーリーになる
本記事では、【EC制作事例:D2C】Mr. CHEESECAKE:オンライン限定販売でブランド価値を高めたストーリーテリングとして、
ブランドの成り立ちから、Shopifyを活用したECデザイン、オンライン限定・数量限定販売の設計、
そしてストーリーテリングの工夫について解説してきました。
Mr. CHEESECAKEの事例が教えてくれるのは、
「オンライン限定」「数量限定」という一見ビジネスを縮小させるような条件も、
設計次第でブランド価値を高める最強のストーリーになり得るということです。
D2CブランドやEC制作の現場では、
「とにかく多く売る」「どこでも買えるようにする」という発想になりがちですが、
Mr. CHEESECAKEのように、
- 語るべきストーリーから逆算して販売条件を決める
- 自社ECを軸に世界観と体験を一貫させる
- SNSや音声など複数チャネルで物語を“拡張”する
というアプローチを取ることで、
「商品を売るECサイト」から「ブランドを育てるECサイト」へと進化させることができます。
あなたがこれから立ち上げる、あるいはリニューアルするD2Cサイトでも、
ぜひMr. CHEESECAKEのようにオンライン限定販売を“ストーリーの武器”にする視点を取り入れてみてください。























コメント