はじめに:売上レポートを「なんとなく見る」から「武器として使う」へ
ShopifyでECサイトを運営していると、つい管理画面のダッシュボードや売上レポートを「なんとなく眺めるだけ」で終わってしまいがちです。
しかし本来、「売上レポート」=商品別・チャネル別の販売動向を可視化し、次の一手を決めるための意思決定ツールです。
同じ月商100万円でも、
- 特定の商品に売上が偏っているのか
- オンラインストア・実店舗・マーケットプレイスのどこから売れているのか
- 新規顧客が作っている売上なのか、リピーターが支えている売上なのか
によって、取るべき戦略はまったく変わります。
本記事では、Shopifyの「売上レポート(Sales reports)」を使って、商品別・チャネル別に販売動向を読み解く方法を、実務レベルで整理します。
「Shopifyの売上レポート、どこから見ればいいかわからない」「商品別・チャネル別の分析をしたい」といった中小企業〜D2Cブランド担当者の方に向けた入門〜実践ガイドです。
Shopify「売上レポート」の基本構造を理解する
売上レポートへのアクセス方法
まずは、Shopify管理画面で売上レポートにアクセスする基本の流れを押さえておきましょう。
- Shopify管理画面にログイン
- 左メニューから「分析(Analytics)」→「レポート(Reports)」をクリック
- レポート一覧でカテゴリを「Sales(売上)」に絞り込む
これで、以下のような売上レポートにアクセスできるようになります。
- 売上合計(Sales over time)
- 商品別売上(Sales by product)
- 商品バリアント別売上(Sales by product variant SKU)
- チャネル別売上(Sales by sales channel)
- 請求先・配送先エリア別売上
- 平均注文額の推移(Average order value over time) など
まずは、この「Sales」カテゴリのレポート群が、商品別・チャネル別の販売動向分析の主戦場になる、と覚えておけばOKです。
オンライン売上レポートとリテール(POS)売上レポート
Shopifyには大きく分けて、
- オンラインストアなどECチャネルの売上を集計する「Sales reports」
- POS(Shopify POS)を利用した実店舗販売向けの「Retail sales reports」
があります。
実店舗も運営している場合は、オンライン売上レポート+リテール売上レポートを組み合わせることで、オムニチャネル全体の販売動向を把握できます。
レポートの「期間設定」と「指標(メトリクス)」の基本
売上レポートは、次の3点をセットで理解しておくとスムーズです。
- ① 期間:日・週・月単位で、どの範囲のデータを見るか
- ② 指標(メトリクス):合計売上・販売数量・注文数・返品・割引・AOVなど
- ③ 次元(ディメンション):商品・チャネル・エリア・ディスカウントコードなど、「何ごとに集計するか」という切り口
商品別・チャネル別分析は、このうち③「次元」を切り替えるイメージです。
「商品を軸に売上を集計」「チャネルを軸に売上を集計」と切り替えながら、売上の中身を分解していきます。
商品別売上レポートで「何が売れているか」を可視化する
「Sales by product」レポートの見方
商品別の販売動向を見る中心的なレポートが、「商品別売上(Sales by product)」です。
アクセス例:
- 「分析」→「レポート」
- カテゴリを「Sales」に絞り込み
- 「Sales by product」を選択
画面には、商品ごとに以下のような指標の列が並びます(プランやレポート設定によって名称は多少異なります)。
- Product(商品名)
- Net sales(純売上)
- Gross sales(総売上)
- Units sold(販売数量)
- Discounts(割引額)
- Returns(返品数・返品額)
- 平均販売単価 など
このレポートの基本的な読み方は、「期間を設定して、ランキング順に並び替える」ことです。
- 過去30日間の売上上位商品TOP20
- 過去90日間の販売数量上位商品
- 割引額が大きい商品ランキング
などを出すことで、「売上に貢献している商品」「売上は少ないが割引が多い商品」といった特徴が見えてきます。
商品別売上レポートで見るべき3つの観点
商品別売上レポートを実務で活用する際は、次の3つの観点でチェックすると整理しやすくなります。
① 売上・数量・利益のバランス
- 売上額が大きい商品:売上の柱。広告投下・在庫確保の優先度が高い
- 販売数量が多いが単価が低い商品:集客商品・入口商品として機能している可能性
- 売上は少ないが粗利率が高い商品:同梱・アップセルに組み込むと利益改善に効く
Shopify標準レポートだけでは完全な粗利までは追えないケースもあるため、原価データをスプレッドシートや外部アプリで補完すると、より精度の高い「商品別P/L」が作れます。
② 新商品・シーズナル商品の立ち上がり
新商品や季節商材を投入した際は、投入前後の期間比較を行いましょう。
- 新商品の売上推移(週次・月次)
- 既存商品の売上を食っていないか(カニバリゼーションの有無)
- セット販売・バンドル内での役割(ついで買い商品になっているか)
これらはすべて、商品別売上レポートの期間比較・並び替えだけで簡単に確認できます。
③ 死に筋商品の発見と在庫圧縮
「仕入れたのに全然売れていない」「在庫だけ膨らんでいる」商品は、商品別レポートの販売数量の少なさからすぐに見つかります。
- 販売数量が極端に少ない商品
- 過去◯ヶ月間、売上ゼロの商品
こうした商品は、
- 在庫処分セールとして別枠で訴求する
- 人気商品とのセット販売に組み込む
- 思い切ってラインナップから外す
などの判断材料になります。
商品別売上レポートは、そのまま「棚卸しの優先度リスト」になる、と考えても良いくらいです。
バリアント別・コレクション別でも深掘りする
商品別だけで足りない場合は、
- SKU/バリアント別(サイズ・カラーごとの売れ方)
- コレクション別(カテゴリごとの売上構成)
- 商品タイプ・ブランド別(ベンダー別)
といった切り口のレポートも活用します。
例えばアパレルの場合、
- 「Mサイズだけ在庫が常に切れている」
- 「特定カラーばかり売れて他の色が残る」
といった傾向は、バリアント別売上レポートを見れば一目瞭然です。
チャネル別売上レポートで「どこで売れているか」を可視化する
チャネル別売上レポートの基本
マルチチャネル販売をしているストアにとって、「チャネル別売上」は必須の視点です。
Shopifyの売上レポートでは、
- オンラインストア(Online Store)
- Shop アプリ
- POS(実店舗)
- 各種マーケットプレイス・SNS販売チャネル
といった「Sales channel」ごとに売上・注文数・AOVなどを集計するレポートを利用できます。
これにより、
- 売上の大部分はオンラインストアなのか、POSなのか
- Instagram Shop・Shopチャネルなど、新しいチャネルがどれだけ貢献しているか
- チャネルごとの客単価・CVRの違い
といった情報を把握できます。
チャネル別レポートで見るべき3つのポイント
① 売上構成比:どのチャネルが柱になっているか
まずは、チャネルごとの売上構成比をざっくり把握します。
- オンラインストア 70%/POS 20%/その他チャネル 10%
- 広告経由が多いチャネル/オーガニック流入が多いチャネル
売上構成比を把握することで、
- どのチャネルの売上が落ちると全体に大きな影響があるか
- どのチャネルを伸ばせば全体の成長に効きそうか
が見えてきます。
② チャネル別のAOV・CVR:チャネルごとの「質」を比較する
チャネル別売上レポートは、売上だけでなく、
- 平均注文額(AOV)
- 注文数
- セッション数やCVR(別レポートと組み合わせ)
といった指標も合わせて見ると効果的です。
- 同じ売上でも、チャネルAは客単価が高く、チャネルBは回数で稼いでいる
- 広告チャネルはCVRが低く、オーガニックチャネルはCVRが高い
といった違いが分かれば、チャネルごとにKPIや期待値を変えるべきだと気づけます。
③ キャンペーン期間中のチャネル別貢献度
セールやキャンペーンを実施したときは、
- キャンペーン期間 vs 通常期間
- キャンペーン期間のチャネル別売上
を比較することで、
- どのチャネルからの送客がキャンペーン成功に一番貢献したか
- 割引に敏感に反応しているチャネルはどこか
が見えてきます。
次回以降のセールで「どのチャネルに広告費を多めに投下するか」を決める材料として活用できます。
商品別 × チャネル別で「どの商品がどこで売れているか」を見る
クロス集計の考え方
売上レポートを一歩進んで活用するなら、
「商品別」×「チャネル別」のクロス集計が非常に有効です。
- オンラインストアではA商品が売れているが、POSではB商品が強い
- Instagram Shop経由で売れているのはビジュアル映えする商品群
- 特定マーケットプレイスでは低単価商品ばかりが動いている
といった「チャネルごとの得意商品」が見えてくるからです。
実務でのステップ例
- まず「Sales by product」レポートで、期間を指定し、商品別売上を確認
- その後、「Sales by sales channel」レポートで、同じ期間のチャネル別売上を確認
- 必要に応じてレポートをエクスポート(CSV)し、スプレッドシートやBIツールで
「商品 × チャネル」のピボットテーブルを作成
こうすることで、
- 「このチャネルでは、この価格帯の商品が相性が良い」
- 「店舗ではギフト商品が売れているが、ECでは定期購入商品がメイン」
など、より深いInsights(示唆)を得ることができます。
売上レポートのカスタマイズと保存
新レポートUIでのカスタマイズ
Shopifyの新しいレポートUIでは、多くの売上レポートで、
- 表示する指標(メトリクス)の追加・削除
- 次元(ディメンション)の追加・並び替え
- フィルタによる絞り込み
- グラフの種類・表示単位の変更
といった柔軟なカスタマイズが可能です。
例えば「Sales by product」レポートに、
- セール対象商品だけに絞り込むフィルタ
- 「ディスカウントコード」「販売チャネル」を追加した列
を加えて保存すれば、「セール対象商品のチャネル別売上レポート」のような、より実務に直結したビューが作れます。
よく使うレポートは「保存して使い回す」
カスタマイズしたレポートは、「名前を付けて保存」しておくことで、次回からすぐ呼び出せます。
- 商品別売上(月次)
- チャネル別売上(月次)
- セール商品売上(キャンペーン期間専用)
- POS売上(店舗別・スタッフ別)
など、自社のビジネスにとって重要な切り口ごとにレポートをテンプレート化しておくと、「毎回一から条件を設定し直すムダ」を省けます。
売上レポート分析を「意思決定」に結びつけるための4ステップ
ステップ1:最初に「質問」を決める
レポートを開く前に、まずは「何を知りたいのか」を一文で決めます。
- 直近3ヶ月で一番伸びている商品はどれか?
- 広告費をかけているチャネルは、本当に売上に貢献しているか?
- 今回のセールで、一番売れた商品とチャネルの組み合わせは?
質問がはっきりすると、どのレポートを・どの期間で・どの指標を見るかも自然と決まります。
ステップ2:期間と比較軸を決める
次に、
- どの期間を対象にするか(今月/直近30日/キャンペーン期間など)
- 何と比較するか(前期間/前年同月/通常期間など)
を決めます。
「売上が伸びた/落ちた」を判断するには、必ず比較対象が必要だからです。
ステップ3:商品別・チャネル別に分解する
売上合計の増減が分かったら、それを
- ① 商品別
- ② チャネル別
- ③ 商品 × チャネル
と順番に分解していきます。
どこかの粒度で「ここが増えている/ここが落ちている」というポイントが必ず見えてきます。
ステップ4:次のアクションに落とし込む
最後に、見えた事実から「次に何をするか?」を決めます。
- 売れている商品 → 在庫確保・LP強化・広告出稿を増やす
- 売れていない商品 → セット販売・値下げ・廃盤を検討する
- 伸びているチャネル → コンテンツ・広告投資を増やす
- 利益が出ていないチャネル → クリエイティブ・ターゲットの見直し
レポートを見て終わりではなく、「必ず1つ行動を決める」ところまでセットにすると、売上レポートが真価を発揮します。
まとめ:売上レポートを「経営のダッシュボード」に育てる
Shopifyの「売上レポート」は、単に数字を並べるためのツールではなく、
- どの商品が売上を作っているか(商品別)
- どこで売れているか(チャネル別)
- どの期間に何が起きたのか(期間比較)
を整理し、次の一手を決めるための「経営ダッシュボード」です。
特に、
- 「Sales by product」で売れ筋・死に筋を把握する
- 「Sales by sales channel」でチャネル別の強み・弱みを把握する
- 必要に応じてCSVエクスポートし、「商品 × チャネル」のクロス集計を行う
- よく使うレポートはカスタマイズして保存し、毎週・毎月の定例確認に組み込む
といった運用を回していくことで、「勘と経験」に頼らない、データドリブンなShopify運営へと近づいていきます。
ぜひ、この記事を読みながら実際にShopify管理画面の「Analytics → Reports → Sales」を開いてみてください。
自社ストアの「商品別・チャネル別の販売動向」がクリアに見えてくるはずです。























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