「ネットショップの成功は、何を売るかで9割決まる」。これはEC事業においてよく言われる言葉です。しかし、いざ自分のショップを始めようとしたとき、「一体、何を売ればいいのか?」という最初の、そして最大の壁に直面する人は少なくありません。間違った商品を選んでしまえば、時間も資金も無駄になりかねないという不安は当然のものです。
しかし、売れる商品を見つけるのは、運やセンスだけではありません。正しい戦略と手順に基づいた「商品リサーチ」を行うことで、その成功確率を劇的に高めることができます。この記事では、ECビジネス初心者の方でも実践できる、アイデアの発掘からデータに基づいた検証まで、売れる商品を見つけ出すための基本戦略を体系的に解説します。
売れる商品が持つ4つの条件
具体的なリサーチ方法に入る前に、私たちが目指すべき「売れる商品」がどのような条件を備えているのかを理解しておきましょう。闇雲に探すのではなく、この4つの条件をコンパスとしてリサーチを進めます。
市場に十分な需要があるか
どれだけ素晴らしい商品でも、それを欲しがる人がいなければビジネスは成り立ちません。特定のキーワードで検索する人がどれくらいいるか(検索ボリューム)、SNSでどれだけ話題になっているかなど、その商品を求める人の存在を客観的なデータで確認できることが第一条件です。
確実に利益を確保できるか
ビジネスとして継続させるためには、利益が不可欠です。商品の仕入れ値、販売価格、送料、広告費などを考慮した上で、十分な利益率を確保できる価格設定が可能かどうかを冷静に判断する必要があります。安すぎても利益が出ず、高すぎても売れません。
ファンがつくニッチ市場か
万人受けするマス向け商品は、大手企業との厳しい競争に陥りがちです。中小規模のECが狙うべきは、「特定の悩み」や「深い趣味」を持つ、熱狂的なファンが存在するニッチな市場です。このような市場は、価格競争に巻き込まれにくく、リピート購入や口コミも期待できます。
売れる商品のアイデア発掘術
まずは、商品のアイデアを幅広く集めることから始めます。アンテナを高く張り、様々な場所からヒントを見つけ出しましょう。
ECモールの売れ筋から探す
Amazonや楽天市場といった巨大ECモールのランキングは、今まさに売れている商品の宝庫です。総合ランキングだけでなく、カテゴリ別のランキングや急上昇ランキングをチェックしましょう。特に注目すべきは、商品のレビュー欄です。高評価の理由は「強み」であり、低評価の理由は「顧客の不満=改善のヒント」となります。
未来の需要をCFで読む
MakuakeやCAMPFIREといったクラウドファンディング(CF)サイトには、まだ世に出ていない革新的な商品が集まります。ここで多くの支援を集めている商品は、少し先の未来でトレンドになる可能性を秘めています。どのような商品に資金が集まっているかを分析することで、未来の需要を先読みできます。
SNSで悩みや熱狂を探す
Instagram、X(旧Twitter)、YouTubeなどのSNSは、人々のリアルな「悩み」や「情熱」で溢れています。例えば、「#買ってよかった」「#暮らしの知恵」といったハッシュタグを検索すれば、人々が何にお金を使い、何に満足しているかが見えてきます。マニアックな不満が、新商品の絶好のアイデアに繋がります。
アイデアを確信に変える分析
発掘したアイデアが本当に売れるのかを、客観的なデータを用いて検証していきます。このステップが、リサーチの精度を大きく左右します。
ツールで隠れた需要を数値化
GoogleキーワードプランナーやGoogleトレンドといったツールを使い、関連するキーワードが月にどれくらい検索されているか(検索ボリューム)を調査します。検索ボリュームが大きいほど、その商品や関連する悩みを持つ人が多いことを意味します。また、トレンドの推移を見ることで、需要の成長性も判断できます。
競合調査で勝てる場所を知る
その商品を扱っている競合サイトを徹底的に分析します。どのような価格帯で販売しているか、商品の見せ方はどうか、などを調査します。競合が強く、参入の隙がない「レッドオーシャン」なのか、それとも自社の強みを活かして勝てる場所がある「ブルーオーシャン」なのかを見極めます。
テスト販売で需要を最終確認
本格的に商品を仕入れる前に、最小限のリスクで「本当に売れるのか」を試す最終検証です。「予約販売」でWeb広告を出稿して反応を見たり、クラウドファンディングを活用して需要を測ったり、可能な限り最小ロットで仕入れてテスト的に販売してみる、といった方法が有効です。
まとめ:リサーチは仮説と検証
売れる商品を見つけることは、宝くじを当てるようなギャンブルではありません。「アイデア発掘 → データ分析 → 検証」という、科学的なプロセスを繰り返すことで、誰でもその精度を高めることができます。「完璧な商品」を探すのではなく、「特定の顧客の課題を解決できる商品」を見つけ出し、小さなテストで需要を確かめながら着実に歩みを進めることが、ECビジネス成功への最も確実な道です。
まずは、あなたが少しでも興味のあるジャンルのAmazonランキングを眺め、レビューに書かれている「顧客の不満の声」を3つ探すことから始めてみてはいかがでしょうか。
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