- なぜECサイト企画書がプロジェクトの成否を分けるのか?
- 【テンプレート付き】ECサイト企画書に必須の8項目
- 1. 背景と目的(Why):なぜ今、ECサイトが必要なのか?
- 2. コンセプトとターゲット(Who/What):誰に、どんな価値を届けるのか?
- 3. 売上・費用計画(How much):どうやって儲けるのか?
- 4. 集客・マーケティング戦略(How to promote):どうやって知ってもらうのか?
- 5. サイトマップ・主要な機能要件(What to build):どんな機能が必要か?
- 6. デザイン・UI/UXの方向性(How it looks):どんな見た目と使い勝手か?
- 7. 構築・運用体制(Who runs):誰が、どうやって運営するのか?
- 8. プロジェクトのスケジュール(When):いつまでに、何をやるのか?
- 企画書作成を成功させる3つのポイント
- コピペで使える!ECサイト企画書テンプレート(簡易版)
- まとめ
なぜECサイト企画書がプロジェクトの成否を分けるのか?
「ECサイトを立ち上げたい、でも何から始めれば…?」その熱い想いを具体的な形にし、上司や経営陣、制作会社といった社内外の関係者を動かすための「設計図」。それが、ECサイトの企画書です。
優れた企画書は、単なる要望のリストではありません。「なぜこのECサイトが必要で(Why)、誰にどんな価値を届け(Who/What)、どうやって成功させるのか(How)」という一貫したストーリーを示すことで、プロジェクトの成功確率を飛躍的に高めます。
目的1:社内の合意形成(「なぜやるのか」を共有する)
企画書は、経営陣から予算承認を得たり、関連部署(営業、経理、システム部など)から協力を引き出したりするための「共通言語」です。客観的なデータと論理的な計画を示すことで、「個人的な思いつき」ではなく「全社的な重要プロジェクト」として認識させることができます。
目的2:制作会社との共通認識(「何を作るのか」を明確にする)
制作会社に「こんな感じのサイトを作りたい」と曖昧に伝えてしまうと、見積もりが不正確になったり、完成後に「イメージと違う…」という手戻りが発生したりします。企画書で要望を明確に伝えることで、スムーズな開発と適切なコスト管理が実現します。
目的3:プロジェクトの羅針盤(「どこへ向かうのか」を見失わない)
ECサイトの構築は、数ヶ月に及ぶ長期プロジェクトです。途中で様々な意見が出てきても、最初に作った企画書があれば、「我々の目的は何か」「ターゲットは誰か」という原点に立ち返ることができ、プロジェクトが道に迷うのを防ぎます。
【テンプレート付き】ECサイト企画書に必須の8項目
それでは、説得力のある企画書を作成するために不可欠な8つの項目を、具体的な書き方とともに見ていきましょう。この順番に沿って内容を整理すれば、論理的で分かりやすい企画書の骨子が完成します。
1. 背景と目的(Why):なぜ今、ECサイトが必要なのか?
企画書の冒頭で、プロジェクトの正当性と重要性を明確に示します。
- 現状の課題と機会:市場の変化(EC化率の上昇など)、顧客ニーズの変化(オンラインでの購買意欲の高まり)、競合他社の動向、自社の現状(売上の頭打ち、新規顧客の不足など)を客観的なデータと共に記述します。
- ECサイトで目指すゴール:上記の課題を、ECサイトでどのように解決したいのかを具体的に述べます。
- KGI(重要目標達成指標):目的を具体的な数値目標に落とし込みます。これがプロジェクトの最終的な成功基準となります。
例:初年度のEC経由売上3,000万円、新規顧客会員数5,000人、ブランド認知度の向上(サイトへの指名検索数20%増)
【チェックポイント】その目的は、具体的な数値(KGI)で測れるようになっていますか?
2. コンセプトとターゲット(Who/What):誰に、どんな価値を届けるのか?
ECサイトの「魂」となる部分です。誰に、他社とは違うどんな価値を提供するのかを定義します。
- ターゲット顧客:年齢、性別、ライフスタイルなどの属性で、メインターゲットとなる顧客層を定義します。
- ペルソナ:ターゲットをさらに深掘りし、一人の具体的な人物像として描き出します。その人の悩みや願望を理解することが、心に響くサイト作りの第一歩です。
- 提供価値(コンセプト):そのペルソナに向けて、どんな独自の価値(ベネフィット)を提供し、どんな体験をしてもらいたいのかを言語化します。競合にはない強み(USP)を明確にしましょう。
例:「忙しい毎日を送る30代女性(ペルソナ)に、当社の文房具を通じて、書くことで自分と向き合う『心豊かな時間』(コンセプト)を提供する」
【チェックポイント】そのECサイトでなければならない「独自の理由」は明確ですか?
3. 売上・費用計画(How much):どうやって儲けるのか?
ビジネスとして成立することを示す、最も重要なセクションの一つです。
- 売上目標の算出根拠:「売上 = サイト訪問者数 × 購入率(CVR) × 平均顧客単価」の公式を元に、目標達成までの現実的なシミュレーションを示します。
- 費用(イニシャル/ランニング):
- 初期費用(イニシャル):サイト構築費、デザイン費、コンテンツ制作費など。
- 運用費用(ランニング):サーバー代、システム利用料、広告宣伝費、人件費、物流コストなど。
- 投資対効果(ROI):いつ頃に初期投資を回収し、黒字化できるかの見通しを立てます。
【チェックポイント】売上目標は希望的観測ではなく、具体的なアクションに基づいていますか?
4. 集客・マーケティング戦略(How to promote):どうやって知ってもらうのか?
どんなに素晴らしいサイトを作っても、お客様が来なければ意味がありません。具体的な集客方法を計画します。
- 集客チャネル:SEO(検索エンジン最適化)、Web広告(リスティング、SNS広告)、SNS(Instagram, Xなど)の公式アカウント運用、メールマガジン、インフルエンサーマーケティングなど、どの手法に注力するかを明記します。
- 立ち上げ後の戦略:サイト公開直後のスタートダッシュ期、安定運用の通常期で、それぞれどのような施策を打つのかを計画します。
【チェックポイント】ターゲット顧客は、普段どこで情報を集めていますか?その場所にアプローチできていますか?
5. サイトマップ・主要な機能要件(What to build):どんな機能が必要か?
制作会社が「何を作るべきか」を理解し、正確な見積もりを出すための土台となります。
- サイトマップ:サイト全体のページ構成をツリー構造で示します。(例:トップページ、商品一覧、商品詳細、カート、会社概要など)
- 機能要件(ユーザーから見える機能):商品検索、会員登録、レビュー投稿、クーポン、お気に入り登録、定期購入など、ECサイトに必要な機能をリストアップし、優先順位(必須/推奨/希望)をつけます。
- 非機能要件(サイトの品質に関する要件):セキュリティ対策、表示速度(パフォーマンス)、常時稼働(可用性)など、ユーザーの目には見えないけれど重要な品質要件についても触れておきましょう。
【チェックポイント】その機能は「あったらいいな」ではなく、「目的達成に本当に必要」なものですか?
6. デザイン・UI/UXの方向性(How it looks):どんな見た目と使い勝手か?
サイトの世界観と、顧客の使いやすさに関する要望を伝えます。
- デザインコンセプト:サイトのコンセプトを体現するデザインの方向性を、キーワード(例:ミニマル、温かみ、高級感)で示します。
- 参考サイト:イメージに近いサイトを3つほど挙げ、それぞれの「どの部分が良いと思うか」を具体的に説明します。
- UI/UXの重視点:ターゲット顧客(ペルソナ)にとって、どのような操作性や情報設計が使いやすいかを考えます。(例:スマートフォンでの操作性を最優先する、高齢者向けに文字を大きくするなど)
【チェックポイント】そのデザインは、設定したペルソナの心に響くものですか?
7. 構築・運用体制(Who runs):誰が、どうやって運営するのか?
プロジェクトを遂行し、サイトを継続的に運営していくための体制を明記します。
- プロジェクト体制:プロジェクト全体の責任者(オーナー)、各タスクの担当者(コンテンツ作成、デザイン確認など)、関係部署との連携方法を定義します。
- 運用体制とフロー:サイト公開後、誰が「ささげ業務(撮影・採寸・原稿作成)」「商品登録」「受注管理」「顧客対応」「マーケティング施策」を行うのかを決めます。
【チェックポイント】サイト公開後の「中の人」は決まっていますか?その人の業務負荷は現実的ですか?
8. プロジェクトのスケジュール(When):いつまでに、何をやるのか?
プロジェクト全体の流れと期限を可視化し、関係者間の共通認識を作ります。
- マイルストーン:企画、要件定義、デザイン制作、システム開発、テスト、サイト公開といった大きな区切り(マイルストーン)を設定し、それぞれのおおまかな期間を定めます。ガントチャートなどで示すと分かりやすいです。
【チェックポイント】スケジュールに、予期せぬトラブルを想定した「バッファ(予備期間)」は含まれていますか?
企画書作成を成功させる3つのポイント
- 一人で抱え込まず、関係者を巻き込む:企画の早い段階で、関連部署のメンバーにヒアリングしましょう。現場の課題やアイデアを取り込むことで、企画の質が高まり、後の協力も得やすくなります。
- 専門用語を避け、誰が読んでも分かる言葉で書く:企画書は、ITに詳しくない経営陣や他部署のメンバーも読みます。「CVR」や「UI/UX」といった言葉には注釈を入れるなど、分かりやすさを心がけましょう。
- 100%を目指さない。まずは叩き台を作ることが重要:最初から完璧な企画書を作ろうとすると、いつまでも完成しません。まずは8つの項目を埋めた「叩き台」を作り、それをもとにチームや上司と議論を重ねてブラッシュアップしていきましょう。
コピペで使える!ECサイト企画書テンプレート(簡易版)
以下に、本記事で解説した8項目をまとめた簡易テンプレートを用意しました。企画書の骨子としてご活用ください。
【ECサイト新規構築プロジェクト企画書】
背景と目的
現状の課題・機会:
ECサイトで目指すゴール:
KGI(数値目標):
コンセプトとターゲット
ターゲット顧客層:
ペルソナ像:
サイトコンセプト/提供価値:
売上・費用計画
売上計画(算出根拠):
費用計画(初期/運用):
投資対効果(黒字化の見通し):
集客・マーケティング戦略
主要な集客チャネル:
時期別の施策プラン:
サイトマップ・主要な機能要件
サイトマップ(主要ページ):
機能要件(優先順位付き):
非機能要件(品質要件):
デザイン・UI/UXの方向性
デザインのキーワード:
参考サイト(3つ):
UI/UXで重視する点:
構築・運用体制
プロジェクト体制(責任者、担当者):
サイト公開後の運用体制・フロー:
プロジェクトのスケジュール
全体のマイルストーンと想定期間:
まとめ
ECサイトの企画書は、あなたのビジネスの未来を描く重要な設計図です。今回ご紹介した8つの必須項目を一つひとつ丁寧に言語化していくプロセスは、プロジェクト関係者全員の認識を一つにし、成功への確かな道筋を描き出す作業そのものです。
このテンプレートを参考に、まずはあなたの熱い想いを言葉にしてみましょう。その一歩が、ECサイト成功への確かなスタートとなります。
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