ECサイトへの集客が成功し、お客様がサイトを訪れてくれるようになった。しかし、「たくさんのお客様は来るけれど、一人あたりの購入金額(顧客単価)がなかなか上がらない」という新たな壁に直面していませんか?
お客様がカートに入れた商品だけで満足して帰ってしまうのは、非常にもったいないことです。なぜなら、お客様自身もまだ気づいていない「これも欲しかった!」という商品が、お店には眠っているかもしれないからです。この隠れたニーズを掘り起こすのが、AIを搭載した「レコメンドエンジン」です。
シリーズ第20回は、顧客単価を向上させ、サイト全体の売上をブーストするAIレコメンドエンジンの仕組みと、効果的な導入方法を解説します。24時間365日、すべてのお客様に最高の提案をしてくれる”敏腕AI店員”を、あなたのサイトに迎え入れましょう。
AIレコメンドが売上を伸ばす仕組み
AIレコメンドエンジンは、単におすすめ商品を表示するだけではありません。顧客単価と顧客体験を同時に向上させる、2つの強力な販売手法を自動化します。
① 顧客単価を上げるアップセル
アップセルとは、顧客が検討している商品よりも高価格な上位モデルや、より多くの量が入った商品を提案し、購入単価を引き上げる手法です。(例:100gのコーヒー豆を検討中の顧客に、お得な200gパックを提案する)
② 合わせ買いを促すクロスセル
クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品と関連性の高い別の商品を提案し、「ついで買い」を促す手法です。(例:コーヒー豆をカートに入れた顧客に、おすすめのフィルターやマグカップを提案する)
③ 顧客体験と回遊率の向上
的確なレコメンドは、顧客が知らなかった魅力的な商品との「偶然の出会い」を創出します。これにより、顧客満足度が高まると同時に、サイト内を巡るページ数(回遊率)も増加し、さらなる購買機会が生まれます。
AIレコメンドの主な種類と特徴
AIレコメンドエンジンは、主に3つのアルゴリズム(計算方法)を組み合わせて、最適な商品を提案しています。
① 協調フィルタリング
「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」というロジックです。多くのユーザーの購買行動データを基に、「あなたと似た興味を持つ人々」が購入した商品を推薦します。Amazonなどで広く使われている、最もポピュラーな手法です。
② コンテンツベース
「この商品と似ている商品はこちらです」というロジックです。現在顧客が見ている商品のカテゴリ、色、ブランド、価格帯といった特徴(コンテンツ)と類似した商品を推薦します。まだ購買データが少ない新商品などにも有効です。
③ ハイブリッド型
協調フィルタリングとコンテンツベースなど、複数のアルゴリズムを組み合わせたものがハイブリッド型です。それぞれの長所を活かし、短所を補い合うことで、より精度の高いレコメンドを実現します。現代の多くのAIレコメンドエンジンがこの方式を採用しています。
導入で失敗しないための3つのコツ
AIレコメンドエンジンを導入しても、その使い方を間違えると効果は半減します。成果を最大化するための3つのコツを押さえましょう。
① 表示する場所とタイミング
レコメンドを表示する場所は、商品ページの下部だけでなく、トップページ(「あなたへのおすすめ」)、カートページ(「こちらもご一緒にいかがですか?」)、さらには購入後のサンクスメールなど、様々です。顧客の購買プロセスのどこで、何を提案するのが最も効果的かを考えましょう。
② ABテストによる効果検証
「この場所には、協調フィルタリングとコンテンツベースのどちらのロジックで表示するのが良いか?」といった仮説を、ABテストで検証することが重要です。データに基づいて、常に最適な表示方法を模索し続けましょう。
③ プラットフォームとの連携性
Shopifyなどの主要なECプラットフォームには、導入が簡単なAIレコメンド機能を持つアプリが多数存在します。自社のECカートシステムとスムーズに連携でき、導入・運用のサポートがしっかりしているツールを選びましょう。
まとめ:AI店員を雇い売上を最大化
AIレコメンドエンジンは、すべてのお客様一人ひとりに対して、その人の興味や関心を完璧に理解した上で、最適な商品を提案してくれる最高のセールスパーソンです。
この優秀な”AI店員”を雇うことは、顧客単価を向上させる上で最も直接的で効果の高い施策の一つと言えます。多くのツールには無料トライアル期間が設けられています。まずは気軽に試してみて、その驚くべき売上向上効果を実感してみてください。
次回の記事では、レコメンドと並ぶもう一つの強力な接客ツール、「AIチャットボット」を導入し、顧客満足度と転換率を上げる方法について詳しく解説します。
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