ECサイトのレイアウトという「器」が完成し、いよいよ「魂」となる商品情報を登録する段階です。しかし、この商品登録、通称「ささげ(撮影・採寸・原稿)業務」こそが、多くのEC担当者を悩ませる、時間と労力が非常にかかる作業ではないでしょうか。
新商品が入荷するたびに、撮影、背景切り抜き、サイズ計測、商品説明文の作成…この果てしない繰り返し作業がボトルネックとなり、商品公開の遅れや人件費の増大を招いています。この「時間泥棒」とも言える業務に、革命を起こすのがAIです。
シリーズ第11回は、EC運営の心臓部でありながら最も負荷の高い「ささげ業務」を、AIを活用して9割自動化し、時間とコストを劇的に削減する具体的なテクニックを解説します。単純作業から解放され、より創造的な仕事に集中するための第一歩を踏み出しましょう。
AIが変える「撮影」の常識
商品の魅力を伝える「撮影」業務は、最も手間がかかる工程の一つです。AIは、この撮影工程の多くを自動化・高度化します。
① AIによる背景の自動切り抜き
これまで手作業で数分かかっていた商品画像の背景切り抜き作業を、AIが一瞬で完了させます。ECサイトで必須の白抜き画像はもちろん、指定した背景との合成も数クリックで可能です。
② AIモデルによる着画の自動生成
アパレルECなどでコストのかかるモデル撮影。AIを使えば、商品画像一枚から、様々な人種や体型のAIモデルが商品を着用した「着画」を無限に自動生成できます。モデル費や撮影コストをゼロにすることも夢ではありません。
③ AIによる商品画像の高画質化
少し画質が粗い商品画像や、スマートフォンで撮影した画像も、AIが高解像度化(アップスケーリング)し、プロが撮影したようなクリアな画像に変換します。画像の品質を手軽に向上させることができます。
AIが可能にする「採寸」の自動化
アパレルや雑貨ECで必須となる「採寸」業務。一点一点メジャーで測るというアナログな作業も、AIによって自動化が進んでいます。
① 画像から寸法を自動で推定
商品画像と、基準となるオブジェクト(例:スマートフォン)を一緒に撮影するだけで、AIが画像から商品の縦・横・高さなどの寸法を自動で推定・算出する技術が実用化されています。
② 採寸データの自動入力・整形
AI-OCR(光学的文字認識)技術を使えば、手書きの採寸メモや商品タグの情報を読み取り、ECサイトの登録フォーマットに合わせてテキストデータを自動で入力・整形することが可能です。入力ミスも防げます。
③ サイズレコメンド機能への応用
自動でデータ化された正確な商品サイズは、顧客の身体サイズと照合し、「あなたにおすすめのサイズはMです」といったサイズレコメンド機能の精度向上にも繋がり、返品率の低下に貢献します。
AIが生み出す「原稿」作成革命
一件一件作成するのに意外と時間がかかる商品説明文。AI、特に生成AIの登場は、この「原稿」作成に革命をもたらしました。
① 商品情報から説明文を自動生成
商品の素材、色、サイズ、特徴などのキーワードをいくつか入力するだけで、AIが顧客の購買意欲を掻き立てるような、自然で魅力的な商品説明文を数秒で自動生成します。
② SEOに強いキーワードの挿入
商品説明文を生成する際に、「SEOキーワードを盛り込んで」と指示すれば、AIが検索で上位表示されやすいキーワードを自動で文章内に組み込み、SEO対策まで同時に完了させてくれます。
③ ターゲットに合わせた文体変換
生成した文章を、「若者向けのフレンドリーな口調に」「高級感を出すために丁寧な表現に」といった指示で、ターゲット顧客に合わせて瞬時に文体を変換することも可能です。
まとめ:AIで「ささげ」から解放される
これまでEC担当者の多くの時間を奪ってきた「ささげ業務」は、AIの活用によって、その大部分を自動化できる時代になりました。撮影、採寸、原稿、それぞれの工程でAIを導入すれば、商品登録にかかる時間は劇的に短縮されます。
創出された時間で、本来注力すべきマーケティング戦略や顧客対応といった、より付加価値の高い仕事に取り組む。この好循環こそが、EC事業を成長させる原動力となります。まずはどれか一つでも、あなたのサイトの業務に取り入れてみてください。
次回の記事では、特に反響の大きい商品説明文のAIによる自動生成に特化し、コンバージョン率を高めるための具体的な「プロンプト(指示文)」を詳しくご紹介します。
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