ECサイトを運営していると、Google Analytics(GA4)の画面を毎日眺めている方は多いでしょう。しかし、そこに並ぶ無数の数字やグラフの羅列から、「具体的に何を改善すれば売上が上がるのか」という、本当に価値のある”インサイト”を見つけ出せていますか?
多くのEC担当者が、データをただ眺めるだけの「レポーティング」に時間を費やし、次の一手を見つけ出せずにいます。この「データはあるが、活用できていない」という大きな壁を打ち破るのが、AIの力です。
シリーズ第29回は、Google Analyticsに搭載されたAI機能を活用し、膨大なデータの中からサイトの改善点を自動で見つけ出す、新しい時代のアクセス解析術を解説します。AIという名の優秀なデータアナリストと共に、あなたのECサイトをデータ主導で成長させましょう。
AIがアクセス解析を変える理由
AIの登場は、アクセス解析を「過去を振り返る作業」から、「未来を予測し、行動を決定する作業」へと進化させます。
① データから「インサイト」を発見
AIは、人間では気づきにくいデータの中の異常値や相関関係を自動で発見します。「先週、特定のブログ記事からの購入率が急上昇した」といった、ビジネスチャンスに繋がる”インサイト(洞察)”をAIが教えてくれます。
② 未来のユーザー行動を「予測」
過去のデータに基づき、AIは「今後7日以内に購入する可能性が高いユーザー」や「離脱する可能性が高いユーザー」といった未来の行動を予測。これにより、先回りしたマーケティング施策を打つことが可能になります。
③ 分析作業そのものを「自動化」
これまで人間が時間をかけて行っていた、レポートの作成やデータの集計といった作業をAIが自動化。分析にかかる時間を大幅に削減し、人間はより戦略的な「意思決定」に集中できるようになります。
GA4標準搭載のAI機能を活用
Google Analytics 4(GA4)には、特別な設定なしで使える強力なAI機能が標準で搭載されています。まずはここから活用しましょう。
① 「インサイト」機能の活用法
GA4のホーム画面には、「インサイト」というカードがあります。ここには、AIが自動で発見した「先週と比べてユーザー数が急増しました」といったデータの変化や異常値が、日本語で分かりやすく表示されます。毎日ここをチェックするだけでも、多くの気づきを得られます。
② 「予測指標」で未来を読む
GA4では、AIが「購入の可能性」「離脱の可能性」などを予測し、その予測に基づいた「予測オーディエンス」を自動で作成できます。このオーディエンスをGoogle広告と連携させれば、購入確率が非常に高い顧客だけに広告を配信でき、費用対効果を劇的に改善できます。
③ 「探索」でAIと対話する
GA4の「探索」レポートでは、「先月の国別ユーザー数を表示して」のように、平易な言葉で質問を入力すると、AIがその答えとなるレポートを自動で生成してくれます。複雑なレポート設定を覚える必要はありません。
外部AIツールとの連携テクニック
GA4のデータを外部のAIツールと連携させることで、さらに高度な分析が可能になります。
① BigQuery経由でデータを連携
GA4の生データをGoogle BigQueryというデータウェアハウスにエクスポート。それをChatGPTのデータ分析機能やGoogle AI Platformなどの外部AIツールに連携させることで、より自由で専門的な分析が可能になります。
② AIによるレポートの自動要約
GA4からエクスポートした週次レポートのデータをAIに入力し、「このレポートの要点を3つにまとめて、来週のアクションプランを提案して」と指示。面倒なレポート読解と要約作業をAIに任せることができます。
③ 改善施策のAIによる提案
「コンバージョン率が低いこのページの改善案を5つ提案して」のように、具体的な課題をAIに投げかけることで、データに基づいた改善施策のアイデア出しをAIにサポートしてもらうことも可能です。
まとめ:データ主導のECサイト運営へ
ECサイト運営の答えは、すべてGoogle Analyticsのデータの中に眠っています。そして、その宝の山から価値あるインサイトを掘り出すための最高の道具が「AI」です。
もう、意味も分からずデータを眺めるのはやめにしましょう。AIを優秀なパートナーとして活用し、すべての意思決定をデータに基づいて行う「データ主導」のECサイト運営を始めることで、あなたのサイトは着実に成長していくはずです。
さて、次はいよいよ最終回です。このシリーズ全体を振り返り、AIと共に進化し続けるECサイトの未来像と、あなたが次に取るべきアクションを提示します。
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