なぜ「特商法表記」は必要なのか
ECサイトを立ち上げたばかりの時、多くの規約や法律に戸惑うかもしれません。その中でも「特定商取引法に基づく表記」は、すべてのECサイト運営者が必ず対応しなければならない最重要項目の一つです。ここでは、なぜこの表記が必要不可欠なのか、その理由を3つのポイントから解説します。
消費者を守るための法律
特定商取引法(特商法)は、訪問販売や通信販売など、消費者トラブルが生じやすい取引を対象に、事業者が守るべきルールを定めた法律です。ECサイト(ネットショップ)は「通信販売」にあたります。事業者の情報を明確に開示させることで、消費者は「誰が、どこで、何を販売しているのか」を正確に把握でき、安心して買い物をすることができます。
サイトの信頼性向上に繋がる
法律で義務付けられているのはもちろんですが、特商法表記はサイトの信頼性をアピールする上でも非常に重要です。必要な情報がきちんと記載されているサイトは、お客様に「このお店は誠実に対応してくれそうだ」という安心感を与えます。逆に、この表記がない、または内容が不十分だと、お客様は不安を感じて購入をためらってしまうでしょう。
未表記の場合の罰則リスク
特定商取引法に基づく表記を怠ったり、虚偽の情報を記載したりした場合、業務改善の指示や業務停止命令、さらには罰金などの行政処分や罰則の対象となる可能性があります。知らなかったでは済まされない厳しいルールです。ビジネスを健全に継続するためにも、必ず正しく表記しましょう。
【完全版】特商法表記の必須項目
では、具体的にどのような情報を記載すればよいのでしょうか。法律で定められている必須項目は多岐にわたりますが、ここではECサイト運営で特に重要なものをピックアップして解説します。このリストをチェックリストとしてご活用ください。
事業者の氏名・住所・電話番号
誰が運営しているのかを明確にするための基本情報です。
- 事業者の氏名(名称):個人の場合は戸籍上の氏名、法人の場合は登記された名称を記載します。屋号やサイト名だけでは認められません。
- 事業者の所在地:個人の場合は現に事業を行っている住所、法人の場合は登記された住所を記載します。
- 事業者の電話番号:確実に連絡が取れる電話番号を記載します。
販売価格と送料・支払い方法
お金に関するトラブルを防ぐための重要な項目です。
- 販売価格:商品ごとに税込み価格で表示するのが基本です。
- 送料:送料の金額、または計算方法を明記します。
- 代金の支払方法と時期:クレジットカード、銀行振込など利用できる支払方法と、それぞれの支払時期を記載します。
返品・交換に関する特約
クーリング・オフ制度のない通信販売では、返品に関するルールを明記することが法律で定められています。
- 商品の引渡時期:注文を受けてから商品を発送するまでの期間を記載します。
- 返品に関する特約:返品・交換の可否、条件(「未開封に限る」など)、送料の負担について記載します。「返品不可」の場合は、その旨を明確に記載しないと、返品に応じなければならなくなる可能性があります。
個人事業主のよくある疑問と対策
特に個人でECサイトを運営する場合、「自宅の住所や個人の電話番号を公開したくない」という不安を持つ方が多くいます。ここでは、そうした個人情報に関する疑問点と、法律で認められている対策について解説します。
個人情報の記載を省略できる?
はい、一定の条件下で省略が可能です。住所と電話番号については、「請求があった場合に遅滞なく開示する」という旨を記載し、請求方法(お問い合わせフォームやメールアドレスなど)を明記すれば、表記を省略することが認められています。ただし、事業者の氏名(戸籍上の本名)の省略はできません。
事務所が自宅の場合の住所
自宅で運営している場合でも、原則としてその住所を記載する必要があります。しかし、上記「省略のルール」を使えば、Webサイト上での公開を避けることが可能です。また、BASEやSTORESなどの一部のプラットフォームや、バーチャルオフィスが提供する住所・電話番号を利用する方法もあります。
電話番号は携帯でも良いか
はい、問題ありません。お客様からの問い合わせに確実に応答できる番号であれば、固定電話である必要はなく、個人の携帯電話番号でも法律上の要件を満たします。ただし、こちらも「省略のルール」を活用することで、Webサイト上での公開を避けることができます。
まとめ
「特定商取引法に基づく表記」は、ECサイトを運営する上での法律上の義務であり、お客様からの信頼を得るための重要な要素です。必須項目を正確に記載することは、消費者トラブルを未然に防ぎ、事業者自身を守ることにも繋がります。この記事をチェックリストとして、ご自身のサイトに専用ページを設け、フッターなどからいつでもアクセスできるように設定してください。正しい表記で、お客様に安心感を与えるサイト運営を目指しましょう。











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