EC事業の経費計上の基本ルール
EC事業が成長し、利益が大きくなるほど気になるのが「税金」です。効果的な節税の第一歩は、事業にかかった費用を「経費」として正しく計上すること。しかし、何が経費になり、何がならないのか、その判断は意外と難しいものです。ここでは、まず押さえておくべき3つの大原則を解説します。
事業関連性の明確な証明
経費として認められるための最も重要な原則は、「事業の売上を上げるために直接必要であったか」を明確に説明できることです。例えば、商品の梱包材は売上(発送)に不可欠なので経費になります。判断に迷った際は、「この支出がなければ売上は上がらなかったか?」と自問自答してみるのが一つの基準になります。
経費を証明する書類の保管
支出が事業に関連することを証明するために、領収書やレシート、請求書、クレジットカードの利用明細などの証拠書類(証憑)を必ず保管してください。税務調査などで経費の内容を問われた際に、これらの書類がなければ経費として認められない可能性があります。7年間の保管義務があるため、整理してファイルしておきましょう。
家事按分という考え方
自宅を事務所として利用している場合、家賃や水道光熱費、通信費など、事業とプライベートの両方に関わる支出が発生します。この場合、事業で使用している割合を算出して、その部分だけを経費として計上します。これを「家事按分(かじあんぶん)」といい、合理的な基準で按分することが重要です。
【一覧】経費にできるものの具体例
EC事業においては、多岐にわたる費用が発生します。ここでは、経費として計上できる代表的なものをカテゴリーに分けて具体的にご紹介します。漏れなく計上することで、大きな節税効果が期待できます。
売上原価と販売促進費
EC事業の根幹をなす費用です。特に売上原価は、計上ルールを正しく理解することが重要です。
- 売上原価:販売した商品の仕入れ代金や製造原価。(注意:在庫として保管している分は、販売されるまで経費になりません)
- 販売促進費:Web広告費、アフィリエイト費用、SNS運用代行費、チラシ作成費など。
サイト運営に関わる費用
オンラインショップを維持・運営するためにかかる費用も、もちろん経費になります。
- 通信費:サーバー代、ドメイン費用、有料カートシステムの月額利用料など。
- 消耗品費:梱包材、ガムテープ、プリンターのインク、商品撮影用の小物など。
- 支払手数料:販売時の決済手数料、銀行の振込手数料など。
家事按分できる費用
自宅兼事務所の場合、以下の費用は事業使用割合に応じて経費にできます。
- 地代家賃:事務所として使用している面積の割合で按分。(例:家全体の20%を事業で使っていれば家賃の20%)
- 水道光熱費:事業での使用時間やコンセント数など、合理的な基準で按分。
- 通信費:インターネット回線やスマートフォン料金など。
注意!経費にできないものの具体例
一方で、「これは経費になりそう」と思っても、税法上認められない支出も存在します。誤って計上すると、後々の税務調査で指摘される可能性もあるため、しっかりと区別しておきましょう。
個人事業主自身の給与
法人と違い、個人事業主は自分自身に「給与」を支払って経費にすることはできません。事業主の生活費は、売上から経費を差し引いた「事業所得」から賄うという考え方のためです。ただし、家族を従業員として雇用し、妥当な給与を支払う「青色事業専従者給与」は経費にできます。
個人的な支出や生計費
事業とは関係のない、個人的な食事代や衣料品代、趣味の費用などは当然経費にはなりません。事業用のクレジットカードで個人的な買い物をした場合は、帳簿上で「事業主貸」として処理し、経費とは明確に区別する必要があります。
税金や社会保険料の一部
税金の中でも、個人事業主が納める所得税や住民税は経費にできません。これらは事業で得た利益(所得)に対して課される税金だからです。同様に、国民健康保険料や国民年金も経費にはなりませんが、これらは所得控除の対象となり、結果的に税額を抑える効果があります。
まとめ
EC事業における節税の基本は、「事業の売上を伸ばすために使った費用は、漏れなく経費として計上する」という点に尽きます。そのためには、日頃から領収書を確実に保管し、こまめに帳簿付けを行う習慣が不可欠です。特に、家事按分を正しく活用することで、大きな節税に繋がる可能性があります。判断に迷う支出があれば、安易に自己判断せず、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。











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