3C分析で「競合」をどう見る?明日から使える具体的な分析手順とテンプレート
「3C分析のフレームワークは知っているけど、いざ『競合』を分析しようとすると、何から手をつけていいか分からない…」
「競合の情報を集めただけで満足してしまい、戦略的な洞察に繋がらない…」
マーケティングの基本でありながら、多くの担当者がつまずきやすいのが「競合(Competitor)」分析です。この分析の目的は、単に競合のスペックをリストアップすることではありません。競合の戦い方を理解し、市場のルール(成功要因)を見極めた上で、自社が勝てる独自のポジションを発見することにあります。
この記事では、3C分析における競合分析を「知っている」レベルから「使える」レベルに引き上げるための、具体的な4ステップの手順と、すぐに使えるテンプレートを解説します。
競合分析の具体的な進め方【4ステップ】
競合分析は、以下の4つのステップで進めることで、抜け漏れなく、実用的な分析結果を得ることができます。
ステップ1:競合を特定し、分類する
まず、分析の対象となる競合をリストアップします。このとき、競合を以下の3つのレベルで考えると、市場を立体的に捉えることができます。
- 直接競合: 自社と同じ製品・サービスを、同じ顧客層に提供している企業。(例:カフェAにとっての近隣のカフェB)
- 間接競合: 提供する製品は違うが、同じ顧客ニーズを満たしている企業。(例:カフェにとってのコンビニのイートインスペース)
- 潜在的な競合(新規参入者): 今後、市場に参入してくる可能性のある企業。
全ての競合を詳細に分析するのは非効率です。まずは影響の大きい直接競合を3〜5社選び、優先的に分析しましょう。
ステップ2:調査項目を洗い出し、情報を収集する
次に、選定した競合について、具体的な情報を収集します。以下の3つの視点から、調査項目を整理すると網羅的に情報を集めることができます。
A) 経営・事業レベルの情報
企業の全体像や方向性を把握します。
- 概要: 理念・ビジョン、売上高、利益、従業員数、市場シェアなど
- 事業戦略: 中期経営計画、事業ポートフォリオ、今後の投資分野など
- 情報源: 公式サイト(IR情報、会社概要)、決算短信、プレスリリース、業界新聞など
B) 製品・サービスレベルの情報(4P分析)
顧客に直接影響を与える要素を分析します。
- Product(製品): 製品ラインナップ、機能、デザイン、品質、ブランドイメージ
- Price(価格): 価格設定、料金体系(サブスクリプション、買い切り等)、割引ポリシー
- Place(販路): 販売チャネル(オンライン、店舗)、流通網、営業エリア
- Promotion(販促): 広告(Web、マスメディア)、キャンペーン、広報活動
- 情報源: 公式サイト、製品カタログ、顧客レビューサイト、実際に製品・サービスを利用してみる
C) マーケティング・営業レベルの情報
どのように顧客と接点を持っているかを分析します。
- ターゲット顧客: どのような顧客層を狙っているか
- マーケティング手法: SEO、SNS活用状況、コンテンツマーケティングの内容
- 営業体制: 営業担当者の数、営業スタイル(代理店、直販)
- 情報源: SNS公式アカウント、Web広告、業界レポート、展示会でのヒアリングなど
ステップ3:競合の「強み」と「弱み」を分析する
情報収集で終わらせないためには、集めた「事実(ファクト)」が、顧客視点で見て「強み」なのか「弱み」なのかを解釈する作業が不可欠です。
例えば、「競合A社の価格が高い」という事実は、それだけでは強みか弱みか判断できません。高品質なブランドイメージを求める顧客にとっては「信頼の証」という強みになりますし、価格の安さを求める顧客にとっては弱みになります。
以下のテンプレートを使って整理すると、客観的に分析しやすくなります。
【競合の強み・弱み 分析テンプレート】
調査項目 | 競合A社の状況(事実) | 強み or 弱み | なぜそう言えるか(顧客視点での解釈) |
---|---|---|---|
価格 | 主力製品が市場平均より20%高い | 強み | 高品質なサポートを求める法人顧客にとって、価格の高さが安心感に繋がっているため。 |
販売チャネル | オンライン直販のみ | 弱み | 実物を見てから購入したい顧客層を取り逃がしている可能性があるため。 |
ステップ4:KSF(成功要因)を推測し、自社戦略への示唆を得る
最後に、競合の強みを俯瞰して、「なぜこの競合は市場で成功しているのか?」という市場の成功要因(KSF:Key Success Factor)を推測します。
例えば、ある競合の強みが「高い技術力」「高品質な製品」「専門的な営業担当者」であるならば、その市場のKSFは「製品の品質と信頼性」である可能性が高い、といった具合です。
このKSFを明らかにすることで、
- 競合と同じ土俵(KSF)で、品質を武器に戦うのか?
- あるいは、競合が手薄な「導入のしやすさ」や「価格の手頃さ」といった別のKSFで戦うのか?
といった、自社の戦略の方向性を決定するための重要な判断材料が得られます。ここでの分析結果が、3C分析の最後の「自社(Company)」分析と統合され、最終的な戦略を導き出すのです。
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