はじめに
近年、ECサイトとダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)の掛け合わせによるマーケティング施策が注目されています。デジタル化の進展により、個人消費者はSNSやチャットを通じて情報を得て購買する機会が増え、企業は従来の広告手法だけでなく、顧客との直接的なコミュニケーション(メール・LINE・DMなど)を通じて即効性のある反応を引き出す必要性が高まっています。
中小企業経営者も、自社サービス(ECサイト制作・LP制作・LINE構築など)への導線を築くため、最新のトレンドを踏まえた戦略が求められます。本稿では、2026年時点でのEC業界やDRMの主要トレンド、成功事例、効果的な活用方法を調査し、具体的な事例やデータを交えて解説します。
2026年のEC業界主要トレンド
2026年のEC市場では、次のような潮流が見られます。
AI活用の拡大
生成AIやAR/VR技術を使った「バーチャル・ショッピング」が進展しています。顧客はAIで自分に合う服を仮想試着したり、家具を自分の部屋に配置したり、ライブ配信を通じて専門家に質問したりできます。
特に小売現場では、AIによる顧客セグメンテーションやレコメンド機能の高度化が進み、販売員は自動生成される提案をもとに効率的に接客できるようになっています。さらに、2026年までに主要ブランドが「エージェント型コマース」体験を取り入れ、AIチャットボットを通じて返品・返金・推奨商品の提案などを一括処理する流れが加速すると予測されています。
ノーコード/ヘッドレスコマースツールの普及
Shopify、BASE、STORES、カラーミーショップなど、エンジニア不要でECサイトを構築できるプラットフォームが成熟してきました。テンプレートやアプリで機能拡張が可能で、初期費用を抑えつつ多言語・マルチ決済に対応したEC構築を支援します。
さらに「タグ型ヘッドレスカート」のようなツールも台頭し、既存のLPや企業サイトにJavaScriptタグを貼るだけでカート機能を実装できるようになりました。これにより、特別な開発なしにブログ記事や企業LPを即座に「販売ページ」に変換でき、小規模事業者のEC参入障壁が一層低下しています。
動画コマース(ライブ・ショート動画)の拡大
SNS動画を活用したECが急成長中です。動画プラットフォームと連動する「ライブコマース」や「ショッピング動画」は、エンターテイメント性と購買機会を結びつけます。例えば2025年に日本でもTikTok Shopが本格展開され、TikTokやInstagramのライブ配信で商品を販売する例が増加しています。
日本のライブコマース市場は2025~2030年にかけて高い成長率が見込まれ、TikTok Shop・Instagram Live・YouTube Liveが牽引役になると予測されています。スマホやPCで動画を視聴しながらワンタップで購入する「動画コマース」は、従来のスクロール型LPでは実現しにくい購買フローを構築できる点が特徴です。
OMO/オムニチャネルの深化
オンラインとオフラインの垣根が消え、顧客体験の一貫性が重視されます。実店舗で触った商品をECで購入したり、ECで見た商品を店舗で試着するなど、どこでも同じ体験を提供するOMO(Online Merges with Offline)が普及しています。
これにより、店舗との在庫・顧客管理連携が必須となり、CRMデータの統合活用や自動化が推進されています。
サステナビリティ・越境ECへの対応
消費者のエシカル志向が高まり、環境配慮型パッケージや透明な物流・製造プロセスを打ち出すEC事業者が支持されています。また、越境EC市場の拡大も継続しており、国際マーケットへの対応強化や物流効率化(自動倉庫・最適配送など)が重要課題となっています。
これらのトレンドを踏まえつつ、自社ECサイトやLPの企画・設計を行うことが、2026年の成功の鍵となります。
DRMの最新事例・成果が出ている業種・アプローチ
DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)とは、顧客から直接的な反応(反響)を得ることを目的にした施策手法です。メールマガジン、ステップ配信、SNSチャット、WEB広告→LP→購入までのファネル設計など、多様なチャネル・コンテンツで顧客をダイレクトに誘導し、即時反応やリピートを促します。
最新の成功事例を業種別に見ると、以下のようなケースが報告されています。
教育・情報商材(ベネッセなど)
ベネッセホールディングスは、キャラクターやストーリーを用いたセールスレターと無料プレゼントを組み合わせ、通信教育の見込み顧客を獲得しています。たとえば、学年に応じた悩み提起から「進研ゼミに入ることで志望校に合格できる」と未来像を提示し、無料教材の提供を交える施策が効果をあげています。
また、サブスクリプションモデルで各ライフステージ向けサービスを提供し、長期的なLTV(顧客生涯価値)向上を図っている点も特徴です。
総合EC・D2C(楽天・ドモホルンリンクルなど)
楽天は新規会員獲得時の無料プレゼントに大量のポイントを付与し、顧客に即時の価値提供を行っています。さらに楽天経済圏の多岐にわたるサービスへ誘導することで、1顧客のLTVを最大化する戦略をとっています。
化粧品大手ドモホルンリンクル(再春館製薬所)も、資料請求を導入とするステップメールで教育・啓蒙を重ね、顧客ロイヤルティと高単価商品の成約につなげているとされています。
サブスクリプション/定期通販
健康食品やサプリ、コスメなど、定期購入モデルを採用する業種では、申し込み直後からステップメールやWeb広告を通じて上位商材や継続パターンを提案する手法が有効です。「次回割引」「まとめ買い提案」「会員限定コンテンツ提供」などのDRM施策で、中長期の継続率・LTVが向上しています。
サービス業・小売・ブライダル
LINE CRMツールの導入事例によれば、結婚式場(ブライダル)や小売業でもDRM的アプローチが奏功しています。例えば結婚式場「株式会社スキナ」では、LINE公式アカウントとCRMツールを用いた自動メッセージ配信により、対応可能な顧客数を30%増やしつつ成約率を維持しました。
また販売代理店の関彰商事では、各店舗のLINE友だちを一元管理してパーソナライズ配信を実現し、部門横断的なクロスマーケティングを進めています。
これらの事例から、DRMは商品や業種を問わず「顧客育成~成約」という一連の流れを体系的に構築しやすい手法であることがわかります。ステップメールやLINE・メルマガを通じた教育コンテンツの提供、無料オファーやキャンペーンによる価値提供、そして顧客データに基づくセグメント配信が、共通して成果に結びついています。
ECとDRMの相乗効果・LTV向上施策
ECサイト運営では、顧客生涯価値(LTV)を高めることが事業の継続性を支える重要指標です。DRM施策を併用することで、単なる新規顧客獲得に留まらず、既存顧客との関係深化によるLTV向上を図れます。
具体的には、ECサイトで獲得した顧客データ(購買履歴・属性・行動ログ)を基にメール・LINEでフォローアップやクロスセル提案を自動化し、リピート率を高めることが有効です。
たとえばライブコマース配信では、視聴者情報をCRMと連携し、配信直後にフォローアップメールや割引クーポンを送付することで購入を促進し、さらにポイント還元で継続購入を促す戦略が推奨されています。このようなCRM連携により、「ライブ視聴=単発購入」ではなく「ライブ視聴者→メルマガフォロー→リピート客」という顧客体験をつくり、長期的なLTV最大化につなげます。
実際、様々な業界で導入が進むLINE CRMツールの事例でも、リピート率向上や売上増加に貢献していることが報告されています。
ECサイトにおける主なDRM施策
- ステップ配信メール:登録~購買~フォローまでのシナリオメール(ステップメール)で新規顧客をナーチャリングし、成約率を高める。
- アップセル/クロスセル提案:購入後のフォローで関連商品や上位商品を案内し、客単価を向上させる。
- 優良顧客プログラム:ポイントや会員ランク制度でロイヤル顧客を囲い込み、LTVを増加させる。
- リテンション施策:休眠顧客へリマインドメールや限定割引を実施し、休眠復帰率を引き上げる。
これらの施策はいずれも、顧客との直接的な接点を増やすことで成り立ちます。実店舗とECサイトの在庫・購買情報を統合し、LINEやメールなどで一元的に管理・配信することで、効率よくパーソナライズされたコミュニケーションが可能になります。その結果、「1回限りの広告反応」で終わらせず、顧客生涯を通じた付加価値創出と売上の最大化につなげることができます。
LINEを活用したCRM/DRM成功例
近年、日本で急速に利用者を伸ばしているLINE公式アカウントは、高い到達率・開封率を持つDMチャネルとして注目されています。一般的にメールの開封率は約10%と低いのに対し、LINEメッセージは60%を超える例もあり、消費者とのコミュニケーション促進に強みがあります。
また、LINE公式にはクーポンやショップカード機能、アンケート機能などが標準搭載されており、これらを駆使することで再来店・再購入を促す施策が容易です。
たとえば、ある結婚式場ではLINE公式アカウントにCRMツールを組み合わせ、メッセージの自動配信を導入しました。その結果、顧客数を30%増やしながら成約率を維持でき、スタッフ業務の効率も大幅に改善したと報告されています。
同様に、多店舗展開する小売企業では、店舗間で分散していた顧客情報を一元管理し、アンケート機能で集めた属性データをもとにパーソナルな情報配信を実現した事例があります。これらのケースから、LINE公式アカウントはCRMチャネルとして強力であり、精度の高いセグメント配信や自動応答を通じて顧客満足度と売上を向上できることがわかります。
さらに、LINE広告や外部連携ツールを活用し、ECサイトへの導線を強化する手法も広がっています。顧客がLINEを通じてオンライン上で相談・問い合わせできるチャットボットを設置したり、LINE上でクーポンを配布したりすることで、メールでは得られない高い反応率を実現できます。
中小企業でも、LINE公式アカウント×CRMツールの導入により、少人数のリソースで大手に匹敵する顧客管理とプロモーションが可能になる事例が増えています。
LP(ランディングページ)の設計・構成トレンド
LP(ランディングページ)の設計にも、新たなトレンドが出ています。スマートフォン利用が主流となる中、従来の縦長スクロール型LPではすべての情報をユーザーに届けきれない課題があります。そこで注目されているのが、「スワイプ型LP」です。
これはスマホの慣れた操作である左右スワイプを活用し、1スライドに1メッセージずつ載せるデザインです。1スワイプごとに次の情報が現れるため、コンテンツがテンポよく消化され、スクロールで発生しやすい離脱を防ぎやすくなります。また、TikTokやInstagramストーリーズとの親和性が高く、SNS広告から自然につながるLP体験を提供できます。
デザイン面では、「ノン広告風」コンテンツLP(記事調LP)や3カラム構成の組み合わせもトレンドとなっています。潜在顧客向けには記事LPで情報提供しつつ、顕在顧客向けにはシンプルなオファー型LPを用意するなど、広告媒体ごとにLPを最適化する手法が主流です。これにより、Instagram広告なら診断型LP、検索連動広告なら商品訴求LPといった形で、ユーザーの「今の温度感」に合わせたアプローチが可能になります。
LP制作においてもAIやノーコードツールの活用が進み、コピーや画像生成、A/Bテストの自動化によって制作スピードが向上しています。
LP設計の具体例
- ストーリー仕立てLP:動画や横スワイプでストーリー性を持たせ、ユーザーの関心を引きつける。
- レスポンシブ+マイクロアニメ:シンプルなデザインに軽いアニメーションを組み込み、視覚的関心を維持する。
- ポイント訴求型LP:固定メニュー(アンカーリンク)で問い合わせや購入ボタンへの到達を容易にし、離脱率を低下させる。
- タグ型カートLP:既存ページを活かしたヘッドレスコマースで、商品リストとカート機能をタグで埋め込む形式。
これらのLP設計は、自社サービス(EC制作・LP制作)の品質を差別化できる要素となります。特にスマホユーザーの増加に伴い、スワイプ型・動画型LPなど体験設計を重視したアプローチがコンバージョン向上につながります。
まとめ
2026年のEC・DRM施策では、AIや動画、ノーコードといった最新技術を組み合わせることで、従来のマーケティングから一歩進んだ顧客体験の提供が可能になります。ECサイトとDRMを融合させることで、新規集客だけでなく顧客との長期的なリレーション構築が実現し、LTV向上を通じてビジネスの持続成長につながります。
たとえばLINE公式アカウントをCRMチャネルとして活用し、オートメッセージやアンケートで顧客情報を活用すれば、リピート率の向上や業務効率化といった効果が得られます。本記事で紹介した事例・データを踏まえ、ECサイト制作・LP制作・LINE構築といった自社サービスと組み合わせることで、オンライン集客の成果をさらに高めることができます。
最新のLPトレンドに対応したLP制作で広告コンバージョンを改善し、LINE CRMと連動したメールマーケティングで顧客を育成すれば、広告費対効果の向上が期待できます。今後のWeb戦略では、テクノロジー×コンテンツ×CRMを横断的に組み合わせた総合的な施策設計が重要です。中小企業経営者の皆様には、この記事を参考に具体的な施策イメージを膨らませつつ、自社のマーケティングプランに取り入れていただければ幸いです。


























コメント